Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ききょらい

帰去来

太宰 治

Leggi 帰去来 (ききょらい) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 15.477 caratteri · 31 schermate

Aozora Bunko

或る先輩の好意あふれるばかりの感想文であった。それこそ、過分のお褒めであった。私と北さんとは、黙って顔を見合せ、そうして同じくらい嬉しそうに一緒に微笑した。素晴らしい旅行になりそうな気がして来た。

青森駅に着いたのは翌朝の八時頃だった。八月の中ごろであったのだが、かなり寒い。霧のような雨が降っている。奥羽線に乗りかえて、それから弁当を買った。

「いくら?」

「――せん!」

「え?」

「――せん!」

せん! というのは、わかるけれど何十銭と言っているのか、わからないのである。三度聞き直して、やっと、六十銭と言っているのだという事がわかった。私は呆然とした。

「北さん、いまの駅売の言葉がわかりましたか?」

北さんは、真面目に首を振った。

「そうでしょう? わからないでしょう? 僕でさえ、わからなかったんだ。いや、きざに江戸っ子ぶって、こんな事を言うのじゃないのです。僕だって津軽で生れて津軽で育った田舎者です。津軽なまりを連発して、東京では皆に笑われてばかりいるのです。けれども十年、故郷を離れて、突然、純粋の津軽言葉に接したところが、わからない。てんで、わからなかった。