Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひらがげんないとりものちょう

平賀源内捕物帳

久生 十蘭

Leggi 平賀源内捕物帳 (ひらがげんないとりものちょう) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 18.367 caratteri · 36 schermate

Aozora Bunko

源内先生の憂悶の種はこんなことだった。

宝暦二年、二十一歳で長崎に勉強をしに行った時、長々寄泊して親よりましな親身な世話を受けた本籠町海産問屋、長崎屋藤十郎の妹娘の鳥というのが、江戸日本橋小網町の廻船問屋港屋太蔵方へ嫁に来ていて、夫婦仲もたいへんに睦ましかったのだが、このお盆の十五日、ひわという下女を連れて永代へ川施餓鬼に行った帰途、長崎で世話になった唐人さんが、今、江戸へ上って来ているから、一寸、挨拶をして来ると言って、新堀町で女中を返し、自分ひとりで神田和泉町の陳東海の仮宅へ訪ねて行ったところ、どういういきさつがあったのか、陳に殺されてしまった。

六ツ半といっても、夏のことだからまだ明るい。

陳東海の仮宅の垣根の隣が伊草乙平という謡の先生の家で、向うにも二十坪ばかりの庭があり、向うの梅の枝が垣根を越してこちらへ張り出し、隣の渋柿がこちらの庭に落ちるといったぐあい。垣根とは名ばかりで一つ庭のようなもの。

乙平は気骨の折れる士勤をして肩を凝らすより、いっそ謡でも唱って気楽に、と自分から進んで浪人したくらいの芯からの江戸人。箱根を越えたことがないのが自慢なくらいなのだから、仮宅にもせよ垣根の隣へ唐人が越して来たのを気味悪がって、生来の潔癖から垣根の方へも寄らないようにしていた。