Classici giapponesi con furigana
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ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
Leggi 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) di 松本 泰 (まつもとたい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 52.797 caratteri · 107 schermate
サボイの食堂でたった一目見た印象から、まるでモデルをつかって描いたように、斯くまで描上げた柏の伎倆に私は感嘆した。柏を探したが見当らないので、係員に訊ねると、
「毎日自分の絵を見に来ている、あの日本人の画家ですか、それなら先刻帰りましたよ」
私は男の言葉を背後にきき流して直に柏の宿へ向った。玄関へ入ると出会頭に鼠色の中折帽子を被った男に擦違った。彼だ! サボイ劇場で見掛け、一〇一番の家で椅子の上に仆れていたあの男だ! 私は思わず足を停めて声をかけた。男はチラと振向くなり、逃げるように立去ってしまった。私は三階へ馳上った。
「今出ていった男は何だ、何しに来たのだ」
私は何より先に問いかけた。
「あれか? 別に僕の絵が欲しいようでもないが、僕の出品した例の『歓の泉』を激賞して、モデルは何処からきたかなどと頻りに訊いていたっけ。矢張り僕と同じく彼女の崇拝者かも知れない」
「僕もあの絵を観てきた。近来の傑作だね。君は今朝も会場へいっていたんだってね。一足違いだったよ」
「会場へなんかまだ行くものか、昨日は風邪をひいて臥ていたし、今日は出掛ようとしているところへ、あいつが来たんで……」