Classici giapponesi con furigana
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ひかげのまち
幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選
松本 泰
Leggi 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) di 松本 泰 (まつもとたい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 52.797 caratteri · 107 schermate
今晩は宿めてやりましょうか」
「そうですね、年をとっているし、可哀そうだから、そうしてお上げなさい」
「あの方の家に電話でもあれば、こっちから電話をかけて置いて上げるのですが、何しろ満足に口が利けない程ですの」
三人の話題は一しきりその女のことに及んだが、エリスは話題を変えて、二三日姿を見せぬ伯父の消息を訊ねたり、倫敦の生活は好きかなどときいた。
伯父はコックス家より他に、訪ねる友達を持っていないことを、坂口はよく知っていた。それ故、今頃伯父は何処で、何をしているのかといささか気になってきた。
坂口がコックス家を辞して家へ帰ったのは十時近かった。重い玄関の扉を開けて、しんとしたホールを通ってゆくと、伯父の書斎に電燈が点いていた。彼は、
「オヤ、既うお帰宅りになったな」と思いながら、軽く扉を叩いたが、一向応答がない。そこで恐る恐る扉を開けて、中を覗いてみた。
部屋はきちんと整理いて、明るい電燈が空しく四辺を照らしている。伯父の姿は何処にも見当らなかった。
「先刻家を出るときは、確に電燈が点いていなかったから、私の不在の間に、一ぺんお帰りになったと見える」彼は念のためにホールの鏡の前にいって、平常のステッキと、帽子の置いてないのを確めてから、伯父の書斎へ戻ってきた。