Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひかげのまち

幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選

松本 泰

Leggi 幻の探偵雑誌5 「探偵文藝」傑作選 (ひかげのまち) di 松本 泰 (まつもとたい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 52.797 caratteri · 107 schermate

Aozora Bunko

「静かにさえしていれば、そんな虞はない。まア少しの間、その椅子にでも腰をかけて気を落着けるが可い」

「貴郎は一体何者です。私の持っているものが欲しいなら、指輪でも、首飾りでも、皆あげますから、私を外へ出して下さい」とビアトレスがいうと、男は落着払って答えた。

「今に当方の用事が済んだら出してあげるよ。ここまで来て了えば、いくら騒いでも到底遁れる事は出来ないのだから、その積りで諦めるが可い。別に心配する事はない。晩の十時まで温順しく此処にいればそれでいいのだ」

「母さんや林さんが、此旅館に来ていらっしゃるなんて、先刻電話をかけたのは貴郎でしょう」

「それは貴女を捕虜にする手段さ」

「母さんか、林さんが貴郎の顔を見れば、きっと誰だか知っているに違いありません。貴郎は男の癖に真実に卑怯です。若し母さんに怨恨があるなら、何故男らしく正面から来ないのです」

ビアトレスは段々と落着いてきた。彼女はじっと男の顔を視詰めながらいった。相手は五十を二つ三つ越した色の黒い大柄な男である。彼はそれには応えず、

「どれ、俺は出掛けるとしよう。俺が帰って来るまで昼寝でもしているが可い」