Classici giapponesi con furigana
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げんじゅつてんまたろう
幻術天魔太郎
野村 胡堂
Leggi 幻術天魔太郎 (げんじゅつてんまたろう) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 45.616 caratteri · 90 schermate
豊後守はさすがに勇猛な武人でした。心をしずかにおちつけて、坐禅をくむ心持で、ジッとその怪異を見つめております。
と、これだけのおどかしでは、ききめがないと思ったか、幻術はさらにいたずらをくわえて、豊後守の端坐している朝の食事のへや、およそ十五畳もあるのが、そのまままえのめりに、グイグイと傾斜をはじめ、三十度から四十度、六十度ちかい勾配にまでかたむき、やがてまたもとの平面にかえって、こんどは後の方へ、グイグイとそりかえって行くのです。
傾斜はいたって緩慢で、地震でもなんでもないことは明らかであり、目をはなって庭前を見ると、木立や空をみる角度になんのかわりもないのですから、これは幻覚にすぎないことはたしかで、さすがの豊後守忠秋は、端然とすわったまま膝もくずしませんが、ふたりの若い娘は、大嵐をくった船の客のように、部屋の隅から隅まで、かさなりあい、もつれ合いころがりあって、二つのうつくしい手マリのように、コロコロところげまわるのです。
「バカめッ」
豊後守はおもわず宙を望んで叱咤しました。と、頭の上から声があって、
「おどろいたか豊後守、しばらくはまいにち遊んでやるぞ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッハ、ハハハ」