Classici giapponesi con furigana
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かげおとこ
影男
江戸川 乱歩
Leggi 影男 (かげおとこ) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 154.133 caratteri · 310 schermate
ガスが漏れているのだ。へやのすみの床に近いところに鉛管がひらいている。そこから黄色い毒煙が吹き出しているのだ。それがヘビのように床をはって、おれのほうへ近づいてくる。ああ、もう逃げられない。黄色いヘビが、足をはい上がる。
「ここよ、ここよ」
美与子が、泣き声で叫んだ。そこには、見るもむざんなたどたどしい字で、断末魔の一句がしるしてあった。
もうだめだ。黄色い煙は、へやいっぱいになってしまった。苦しい。くるしい。たすけてくれ。
その最後の行は、もうほとんど文字の形をなしていなかった。もがき苦しむつめのあとにすぎなかった。
昌吉と美与子は、ひしと抱き合って、へやのすみに立っていた。そして、どんなかすかな音も聞きもらすまいと、耳をすましていた。いまにもドアのそとに、レンガ積みの作業がはじまるのではないかと思うと、生きたそらもないのだ。
そのとき、どこかで音がした。ドアの外らしい。コツコツとつづいている。ああ、いよいよレンガ積みがはじまったのであろうか。
だが、そうではなかった。スーッとドアがひらいた。何者かがはいってきた。それはさっき、ふたりをここに運んできた自動車の運転手であった。