Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Leggi 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 193.050 caratteri · 383 schermate
母はそうした感情に揺られた容子もなく「おあがり」と、ぼくの手を取って内へ入れ「何を泣くのさ」と、少し面倒くさそうにぼくを叱った。ぼくはまだ恟々たるものを胸に残しているので、「お父さんは?」と家の中を見廻し「……お父さんは何処へ行ったの」と、何度も訊ねた。
母のことばに依ると、父の敗訴の始末やら多額な賠償金の算段をするために、先頃、郷里の小田原へ行ったので、ここ当分は留守だということであった。
その時は、母のことば通りな父の不在を信じて、僕は内心ほっとしたものだが、しかしそれから一と月も経つと、ぼくにもいろいろ疑わしい節が感づかれて来た。母としては、そのさい、ずいぶん切ない思いだったに違いない。母の言は、子供へも打明け難いための、真赤な嘘だったのである。――ぼくが奉公先へ出たあれから後、父は大審院の敗訴で私書偽造横領罪とかいう判決の言い渡しをうけ、まもなく根岸監獄の未決監に収容されていたのであった。
もっともそれから服役までにも、訴訟相手の高瀬氏が願い下げしてくれるか、会社へかけた損害の賠償義務が果せなどしたら、あるいは体刑まで受けなくても済んだのかも知れないが、平素、借財はあっても預金などは皆無な父だったし、家財道具まで、一、二年の間に売喰いしていた始末なので、それも出来ず、高瀬氏の「吉川を横浜から屠る