Classici giapponesi con furigana
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わすれのこりのき
忘れ残りの記
吉川 英治
Leggi 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 193.050 caratteri · 383 schermate
この児はまだ坐れないらしく、手頸も足もひどく痩せ細っている。まるで肋骨の上に細い首が乗ッかっているような畸形だった。泣き顔には小皺が寄って、小さなお婆さんの顔みたいである。「……どこの子? お母さん」ぼくが訊いても、母も病床の父も、共に唯、暗然としているだけだ。
その晩、あとで母から聞いた話によると、これは出奔した義兄政広の子であった。まだ家が以前の清水町にいた頃、恋愛結婚をした義兄と愛人のお八重というひとが、ぼくらと一つにいたことがある。その後、半年そこそこでお八重は実家へ帰ってしまい、義兄も出奔してしまった事は、先に書いた通りである。
だからこの問題は、当然、とうに解消されていたはずだった。ところが、お八重が実家へ帰ってから産んだ義兄との仲の子は、月足らずでもあったのか、或いはひかんという虚弱体質か、三ツになっても、坐れない、歩けない、発音も満足でないという畸形児だった。
お八重の親は、名うてな相場師で、義兄との結婚前にも、さんざん、ぼくの父を物質的にも精神的にもいためつけた程な男である。こんな畸形児を、可愛がって養っておくはずはない。それに娘の再縁にも邪魔になる。