Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おもいだすことなど

思い出す事など

夏目 漱石

Leggi 思い出す事など (おもいだすことなど) di Natsume Sōseki (夏目 漱石) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 57.003 caratteri · 113 schermate

Aozora Bunko

吾らは平和なる家庭の主人として、少くとも衣食の満足を、吾らと吾らの妻子とに与えんがために、この相撲に等しいほどの緊張に甘んじて、日々自己と世間との間に、互殺の平和を見出そうと力めつつある。戸外に出て笑うわが顔を鏡に映すならば、そうしてその笑いの中に殺伐の気に充ちた我を見出すならば、さらにこの笑いに伴う恐ろしき腹の波と、背の汗を想像するならば、最後にわが必死の努力の、回向院のそれのように、一分足らずで引分を期する望みもなく、命のあらん限は一生続かなければならないという苦しい事実に想い至るならば、我等は神経衰弱に陥るべき極度に、わが精力を消耗するために、日に生き月に生きつつあるとまで言いたくなる。

かく単に自活自営の立場に立って見渡した世の中はことごとく敵である。自然は公平で冷酷な敵である。社会は不正で人情のある敵である。もし彼対我の観を極端に引延ばすならば、朋友もある意味において敵であるし、妻子もある意味において敵である。そう思う自分さえ日に何度となく自分の敵になりつつある。疲れてもやめえぬ戦いを持続しながら、然として独りその間に老ゆるものは、見惨と評するよりほかに評しようがない。