Classici giapponesi con furigana
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おもいでのき
思い出の記
小泉 節子
Leggi 思い出の記 (おもいでのき) di 小泉 節子 (こいずみせつこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 30.841 caratteri · 62 schermate
大学には永くいたいと云う考は勿論ございませんでした。あれだけの時間出ていては書く時間がないので困ると、いつも申していましたから、大学を止められたと云う事でなく、止められる時の仕打ちがひどいと云うのでございました。只一片の通知だけで解約をしたのがひどいと申すのでございました。
原稿がすっかりでき上りますと大喜びで固く包みまして(固く包む事が自慢でございました。板など入れて、ちゃんと石のようにして置くのです)表書を綺麗に書きまして、それを配達証明の書留で送らせました。校正を見て、電報で『宜しい』と返事をしてから二三日の後亡くなりました。この書物の出版は、余程待ちかねて、死ぬ少し前に、『今あの「神国日本」の活字を組む音がカチカチと聞えます』と云って、でき上るのを楽しみにしていましたが、それを見ずに、亡くなりましたのはかえすがえす残念でございます。
ペンを取って書いています時は、眼を紙につけて、えらい勢でございます。こんな時には呼んでも分りませんし、何があっても少しも他には動きませんでした。あのような神経の鋭い人でありながら、全く無頓着で感じない時があるのです。