Classici giapponesi con furigana
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おそろしきさくご
恐ろしき錯誤
江戸川 乱歩
Leggi 恐ろしき錯誤 (おそろしきさくご) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.075 caratteri · 46 schermate
恥しいことだが、正直をいうと、僕は妙子に惚れていた。惚れていたればこそ彼女の居る間は、あれ程も君を始め友人達が驚いていた程も、仕事に没頭出来たんだ。どんなに仕事に夢中になっていたって、俺の女房は、あの片靨の可愛い笑顔で、俺のうしろにちゃんと坐っているんだという安心が、僕をあんな風にしていたんだ。
忘れもしない彼女の初七日の朝だった。ふと新聞を見ると文芸欄の片隅に、生田春月の訳詩がのっていた。――そのある日にはそれとも知らず、なくてぞ恋しき妻である――という一句を読むと、子供の時分からこの方、ずっと忘れて了っていた涙が、不思議な程止めどもなく、ほろほろと零れたっけ。僕は女房の死んだあとになって、僕がどれ程彼女を愛していたかということが分った。……君はこんな繰り言を聞きたくもないだろうね。僕も云い度くはない、殊に君の前では云い度くない。併し、どれ程女房の死が僕を悲しませたか、それがどんなに僕の一生をメチャメチャにして了ったかということを、よくよく君に察して貰い度いからこそ、云い度くもないのを無理にも云っているんだ」
北川氏は如何にも殊勝げにこう語り出したのであった。