Classici giapponesi con furigana
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きょうふのまぼろしへいだんいん
恐怖の幻兵団員
大倉 燁子
Leggi 恐怖の幻兵団員 (きょうふのまぼろしへいだんいん) di 大倉 燁子 (おおくらてるこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 13.784 caratteri · 28 schermate
ところが、突然、それこそ一本の便りもなかった一雄が高砂丸で帰るという吉報が入ったのです。嬉しさで気が狂うということがあったら、あの時の私の場合だったろうと思います。その報らせをもたらしてくれたのも薫さんで、私は夢中ですがりつき、嬉しさのあまり気狂いのようになって、薫さんの手を握ったり、抱きついたり、唇を彼の手に押しつけたりして、子供のように喜び廻わりました。薫さんは黙って、じいと私のなすがままに任かせていましたが、私がやや落ちついたのを見て、
『こんなところを、人が見たら大変ですよ』
と、一言云うと外へ出て行ってしまいました。
あとで考えてみるとあまりの嬉しさからとはいえ、とんだはしたないことをしたと恥しくなりました。そんなに喜んで迎えた一雄はまあどうでしょう、出征前とはまるで別人のような、憂鬱な、暗い男になっておりました。いつも考え込んでいて、何かに脅えてでもいる風なのです。まるで恐怖病にでもとりつかれた人のようになっていたのです。
本邸は窮屈なので、早速この家に移りました、のびのびとした、それこそ新婚生活のような明け暮れを過せるものと、希望に輝いていた私は、帰還した日から、すっかり失望してしまったのです。