Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おんをかえすはなし

恩を返す話

菊池 寛

Leggi 恩を返す話 (おんをかえすはなし) di 菊池 寛 (きくちかん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 9018 caratteri · 19 schermate

Aozora Bunko

戦いは激しかった。宗徒どもは「さんた、まりや」と口々に叫びながら、刀槍、弓矢をはじめ、鍬、鎌などをさえ手にして戦った。三の丸が落ちてから、城方の敗勢はもはやどうともすることができなかった。素肌の老幼などは、一撃の下に倒された。彼らは倒れると、倒れたままに、十字を切って従容と神の国へ急いだ。

惣八郎は手に立ちそうな相手を選んでは、薙ぎ倒した。甚兵衛は、朝来惣八郎の手柄を見て歩いた。時々は、彼もまた自ら戦いたい欲望に駆られて手を下したが、こうして大事な機会が過ぎ去るのが惜しまれたので、敵を巧みに避けては、惣八郎の後を追った。

午の刻を過ぎた。諸方から焼き立てられた火の手は、とうとう本丸に達した。原城の最後の時が来た。城楼の焼け落つる音に交って、死んで行く切支丹宗徒の最後の祈祷や悲鳴が聞えた。

そこには、血と炎との大いなる渦巻があった。流石の甚兵衛も惣八郎を見失ってしまった。夕闇の迫って来るに従って、ますます丹の色に燃え盛る原城を見つめながら、彼は不覚の涙を流したのである。

三月の二日、細川の軍勢は熊本に引き上げた。翌上巳の日に、従軍の将士は忠利侯から御盃を頂戴した。