Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あくまのかお

悪魔の顔

野村 胡堂

Leggi 悪魔の顔 (あくまのかお) di 野村 胡堂 (のむらこどう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 14.677 caratteri · 29 schermate

Aozora Bunko

と言うのは、此邸へ毎日のように出入して居る、芦名兵三郎という若い紳士です。旧家の若主人で、広い屋敷と、恐ろしい貧乏と、それに不相応なつまらない格式とを荷厄介にして居る青年の一人ですが、五分もすかさぬ行届いた身だしなみと、磨き抜いたような滑らかな顔に、どっか女のような陰柔な感じがあります。夫人の濤子とはわけても懇意で、表立っては「奥さん、奥さん」と言って居りますが、蔭へ廻ると「濤子さん――」と言ったような無礼な口を利くそうで、雇人達にまで変な眼で見られて居ります。

「私は石井さんのお説に賛成し度い、犯罪は滅多に偶発するもので無いから、慎重にして周密なる注意によって、大部分は未然に防ぎ得るものです」

医学博士の酒井洪造は、楔形の顎髭を捻り乍ら、さすがに学者らしい事を言います。

「お前は何うだ、何んか面白い説は無いか」

「…………」

主人の馨之助に声を掛けられて、ハッと息を呑んだのは、田庄平という青年紳士です。

主人の甥に当るそうで、子供の時から此邸で育ちましたが、身体が弱い上に学者肌で、人前で口を利くのさえ痛々しいようです。先刻から立て続けに恐ろしい話を聴かされて、蒼白い上品な顔をすっかり硬ばらせて居る位ですから、人殺しに対する意見などがあるわけもありません。