Classici giapponesi con furigana
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さんじのあと
惨事のあと
素木 しづ
Leggi 惨事のあと (さんじのあと) di 素木 しづ (しらきしづ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 11.258 caratteri · 23 schermate
全く何の手ごたえもしない。そして心の底まで冷っとするような気がすると、それと同時に楯井さんは、すぐ嫁さんの霊だと思込んでしまった。
小屋の入口の所で、この様子をみていた楯井さんのおかみさんは、楯井さんがこちらに向って歩いて来るのを見ながら、
『なんだろう、父さん、あんな鳥がいるというが、鳥なら人が行けば逃げそうなもんだね。』
と云いながら急に、
『父さん、父さん、また出た。また出た。』
と叫んだ。楯井さんは急に後を振りかえると、今度は少しはなれた切株の上に、やはり前と同じ火の玉が青白く光っていた。楯井さんは、また静かに歩いて行くと、その切株の側まで行って、例の棒で叩きつけた。火の玉は、またはっと消え去った。
楯井さんは、それを三度くりかえした。そして三度目からもうその火の玉は出なかった。
楯井さんは小屋に入ってからも、別に驚いた様子も見えなかった。火の玉だけで気持を悪くしたのは、かえって楯井さんのおかみさんであった。しかし、おかみさんはすぐにそれを忘れてしまったように、床に入った。
間もなく楯井さんも床に入ったが、彼は少しもねむれなかった。楯井さんの心では、慥かにあの火の玉は、無残に殺された山崎の人々のたましいに違いないと思った。