Classici giapponesi con furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Leggi 愛のごとく (あいのごとく) di 山川 方夫 (やまかわまさお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 103.908 caratteri · 210 schermate
ソファから立ち上ると、部屋を出て行った。
「……ドラムの稽古も止めよう。な?」とやさしく安達はいった。「坊やが、ドラムをたいして好きじゃないのもわかったのさ」
信二は、固い表情でピアノの上の花瓶にいっぱいの、黄と白の大輪の菊をみていた。「……これ」かえってきた荻村が白いセロテープを貼った封筒をわたした。「退職金、小畑信二様」と、表に安達の下手くそなペンの字が書かれていた。
「入れちがいになるかと思って、母に預けといたんだけどね」と、荻村はいった。
こまかな皺を寄せて池を風がわたった。よく見ると、睡蓮の葉かげの古い水に、一匹の緋鯉が沈んでいた。緋鯉は停っていた。
あの娘は、おれの怒った無理じいのキスのことを、安達にいわなかったのかな。信二はそんなことを思ってみた。おれもいいたくはなかったから黙っていた。でも、もう遅すぎるし、そんなことはどうでもいい。あれはただの唇のおしつけあいにすぎなかった。娘の感情についても、仕方ないなとだけぼんやりと彼は思った。
ヴェランダで、幼い少女と少年が人形であそんでいた。甲高い声をあげて、その五歳くらいの少年がよく刈り込んだ芝の庭に下りる。