Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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わがやのらくえん

我が家の楽園

久生 十蘭

Leggi 我が家の楽園 (わがやのらくえん) di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 90.195 caratteri · 175 schermate

Aozora Bunko

いつだったか、通りがかりに、霊南坂でそういう光景を見たことがあった。

燃えるような赤い絨氈を踏んで、新郎新婦が会堂から出てくる頭のうえで、祝鐘がにぎやかに鳴りはためいているのは、まともな結婚など望めそうもない、みっともない百々子にとっても、けっして悪いながめではなかった。麻布の家の引渡しのあった日、千々子さまは、ひとがちがったように浮き浮きしていたが、ひょっとすると、石田氏や百々子の知らないうちに、またもや不幸な魚が鈎にかかり、まさに、釣りあげるばかりになっているのではないかと邪推した。

娘の気質は、母からの遺伝が多いそうだが、そういえば、千々子さまと賢夫人のやりかたに、どちらがどうといえないほど、よく似たところがある。

世の中には、とうとう理解できなかったとか、いちども、うちとけずにしまったというような人間がいるものだが、賢夫人と千々子さまは、そういうたぐいの人柄で、渋谷の奥に住むようになってから、いよいよ、わからない感じが強くなった。

わが賢夫人なる十条賢子さまは、前の関白左大臣という、古今集のなかにでもいそうな、京都のおちぶれ華族の末流の出で、うちのパパより先に、石田与惣兵衛の養女になった。