Classici giapponesi con furigana
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わがあいするしじんのでんき
我が愛する詩人の伝記
室生 犀星
Leggi 我が愛する詩人の伝記 (わがあいするしじんのでんき) di 室生 犀星 (むろうさいせい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 116.728 caratteri · 231 schermate
」
夫人はたびたびの代理で、その隙間を知っていたので笑って答えた。
「お下にゆくふりをして立つんでございましょう。」
「皆の注意が散漫になっている時は分らないもんだ。お下に行くふりが一等わからないね。出たらすぐくるまでお帰り。これがくるま代。」
「え、じゃ行ってまいります。そうね、八時にはちゃんと帰るわ。夕食のお仕度はもう出来ていますから。」
静子夫人は大概の場合殆ど一人で、宴席の作家達からはなれて、近く寄ってくる人に程よく品のある挨拶をして立っていた。ほそれた形のよいなりふりと、上気したすべっこい顔のなかには藤村の愛する血色が、この人のりこうな勝気な瞳を掻き立てて、私はいつも遠くからこの美しい年増さんをながめていた。ただ見ているだけで一度も彼女のそばに行って、挨拶をしたことがなかった。一度挨拶がおくれると、宴席では人眼もあってなかなか近寄って、無邪気に挨拶ができないものであった。それに好みからいえば静子夫人は私にも好ましい婦人であり、藤村のように大きい仕事を次から計画的に書いて行って、それが年月の関係でひとりで組み立てられて行くことが、老作家の晩年をどれだけ生きるうえに働きかけるかが私には羨ましかった。