Classici giapponesi con furigana
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あるおんな
或る女
有島 武郎
Leggi 或る女 (あるおんな) di 有島 武郎 (ありしまたけお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 205.655 caratteri · 406 schermate
とそっぽに向いて、あくびでもしながらのようにいった。これが一か月前だったら、少なくとも三か月前だったら、一夜の安眠に、あのたくましい精力の全部を回復した倉地は、いきなり寝床の中から飛び出して来て、そうはさせまいとする葉子を否応なしに床の上にねじ伏せていたに違いないのだ。葉子はわき目にもこせこせとうるさく見えるような敏捷さでそのへんに散らばっている物を、手紙は手紙、懐中物は懐中物、茶道具は茶道具とどんどん片づけながら、倉地のほうも見ずに、
「きのうの約束じゃありませんか」
と無愛想につぶやいた。倉地はその言葉で始めて何かいったのをかすかに思い出したふうで、
「何しろおれはきょうは忙しいでだめだよ」
といって、ようやく伸びをしながら立ち上がった。葉子はもう腹に据えかねるほど怒りを発していた。
「怒ってしまってはいけない。これが倉地を冷淡にさせるのだ」――そう心の中には思いながらも、葉子の心にはどうしてもそのいう事を聞かぬいたずら好きな小悪魔がいるようだった。即座にその場を一人だけで飛び出してしまいたい衝動と、もっと巧みな手練でどうしても倉地をおびき出さなければいけないという冷静な思慮とが激しく戦い合った。