Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
あるおんな
或る女
有島 武郎
Leggi 或る女 (あるおんな) di 有島 武郎 (ありしまたけお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 205.655 caratteri · 406 schermate
葉子は後ろを振り返って見た。紫色に暮れた砂の上に木部が舟を葦間に漕ぎ返して行く姿が影絵のように黒くながめられた。葉子は白琥珀のパラソルをぱっと開いて、倉地にはいたずらに見えるように振り動かした。
三四町来てから倉地が今度は後ろを振り返った。もうそこには木部の姿はなかった。葉子はパラソルを畳もうとして思わず涙ぐんでしまっていた。
「あれはいったいだれだ」
「だれだっていいじゃありませんか」
暗さにまぎれて倉地に涙は見せなかったが、葉子の言葉は痛ましく疳走っていた。
「ローマンスのたくさんある女はちがったものだな」
「えゝ、そのとおり……あんな乞食みたいな見っともない恋人を持った事があるのよ」
「さすがはお前だよ」
「だから愛想が尽きたでしょう」
突如としてまたいいようのないさびしさ、哀しさ、くやしさが暴風のように襲って来た。また来たと思ってもそれはもうおそかった。砂の上に突っ伏して、今にも絶え入りそうに身もだえする葉子を、倉地は聞こえぬ程度に舌打ちしながら介抱せねばならなかった。
その夜旅館に帰ってからも葉子はいつまでも眠らなかった。そこに来て働く女中たちを一人一人突慳貪にきびしくたしなめた。