Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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あるおんな

或る女

有島 武郎

Leggi 或る女 (あるおんな) di 有島 武郎 (ありしまたけお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 205.655 caratteri · 406 schermate

Aozora Bunko

葉子は新聞記者の来襲を恐れて宿にとじこもったまま、火鉢の前にすわって、倉地の不在の時はこんな妄想に身も心もかきむしられていた。だんだん募って来るような腰の痛み、肩の凝り。そんなものさえ葉子の心をますますいらだたせた。

ことに倉地の帰りのおそい晩などは、葉子は座にも居たたまれなかった。倉地の居間になっている十畳の間に行って、そこに倉地の面影を少しでも忍ぼうとした。船の中での倉地との楽しい思い出は少しも浮かんで来ずに、どんな構えとも想像はできないが、とにかく倉地の住居のある部屋に、三人の娘たちに取り巻かれて、美しい妻にかしずかれて杯を干している倉地ばかりが想像に浮かんだ。そこに脱ぎ捨ててある倉地のふだん着はますます葉子の想像をほしいままにさせた。いつでも葉子の情熱を引っつかんでゆすぶり立てるような倉地特有の膚の香い、芳醇な酒や、煙草からにおい出るようなその香いを葉子は衣類をかき寄せて、それに顔を埋めながら、痲痺して行くような気持ちでかぎにかいだ。その香いのいちばん奥に、中年の男に特有なふけのような不快な香い、他人ののであったなら葉子はひとたまりもなく鼻をおおうような不快な香いをかぎつけると、葉子は肉体的にも一種の陶酔を感じて来るのだった。