Classici giapponesi con furigana
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あるおとこのしゅき
或る男の手記
豊島 与志雄
Leggi 或る男の手記 (あるおとこのしゅき) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 43.279 caratteri · 86 schermate
松本さんは早くから起上って、何度も私の室を覗きにいらしたんですって。私ほんとに恥をかかされちゃったんですの。そのまま飛び出してやろうかと、よっぽど思ったんですけれど、無理に我慢していますと、松本さんは変にしおれ返った様子で、私の手をじっと握りしめなさるんです。でも私知らん顔をしてやりましたわ。それから、二人で先生の家へ行こうと仰言るのを、逃げるようにして飛び出してきました。そして一人で外を歩いてるうちに、どうしていいか分らなくなって、やはり先生にお話してみようと思って、お伺いしたんですの。一昨日の晩からのことを考えると、何だか夢のような気がしたり、またいろんなことが眼の前に押し寄せてきたりして、自分で自分が分らなくなってしまいますわ。どうしたらいいんでしょう? でも、どうせ私は……。」
光子はぷつりと言葉を切って、突然何かに腹を立てでもしたように、早めにすたすたと歩き出した。私達はそれまでに、池を一周半ばかりしたのだった。
光子の話の中で、殊に私の注意を惹いたことが三つあった。河野さんの口から洩れたという私の妻のことと、河野さんが殆んど毎晩のように酒を飲むということと、最後のは全く馬鹿げてるが、松本の下宿で光子が朝遅くまでぐっすり寝入ったということだった。