Classici giapponesi con furigana
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あるひのおおいしくらのすけ
或日の大石内蔵助
Leggi 或日の大石内蔵助 (あるひのおおいしくらのすけ) di Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8830 caratteri · 18 schermate
と云っても、勿論彼が、彼のした行為のあらゆる結果に、責任を持つ気でいた訳ではない。彼等が復讐の挙を果して以来、江戸中に仇討が流行した所で、それはもとより彼の良心と風馬牛なのが当然である。しかし、それにも関らず、彼の心からは、今までの春の温もりが、幾分か減却したような感じがあった。
事実を云えば、その時の彼は、単に自分たちのした事の影響が、意外な所まで波動したのに、聊か驚いただけなのである。が、ふだんの彼なら、藤左衛門や忠左衛門と共に、笑ってすませる筈のこの事実が、その時の満足しきった彼の心には、ふと不快な種を蒔く事になった。これは恐らく、彼の満足が、暗々の裡に論理と背馳して、彼の行為とその結果のすべてとを肯定するほど、虫の好い性質を帯びていたからであろう。勿論当時の彼の心には、こう云う解剖的な考えは、少しもはいって来なかった。彼はただ、春風の底に一脈の氷冷の気を感じて、何となく不愉快になっただけである。
しかし、内蔵助の笑わなかったのは、格別二人の注意を惹かなかったらしい。いや、人の好い藤左衛門の如きは、彼自身にとってこの話が興味あるように、内蔵助にとっても興味があるものと確信して疑わなかったのであろう。