Classici giapponesi con furigana
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とびら
扉
小川 未明
Leggi 扉 (とびら) di 小川 未明 (おがわみめい) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 8143 caratteri · 17 schermate
彼は昨夜も食堂に出て来なかった。Bは床を出ると早速Kの室にやって来たが、気兼をして障子の孔から覗いて見た。まだ昨夜のランプが魂の抜けたように茫然と弱く点いていた。Kは一生懸命にペンを走らせていた。
Bは自分の室へ帰ってからも、Kのことが気になってならなかった。真白な厚い蒲団の上に肥えた身体を投げ出して悶え始めた。何をKが書いているだろう。……
Bには、Kのすることが気にかかってならない。BにはKの言ったことには不思議に反抗が出来なかった。
BはまたKの室の前に来た。中の様子を気遣いながら、腰を屈めて覗いた。やはりKはペンを動かしていた。折々金ペンの光りが鋭く閃めいた。ペンに力が入って紙の目に引懸った時だ。ペンの動く速力は非常に早かった。殆んど息を吐く間も、インキを浸す間もなかった。
Bは腫れた顔に不安の色を漂わして頭を傾げた。朝の湿った空気の底に灰色の建物は沈んでいて静かだ。Bの眼には蜂の針のように尖ったペンが紙の上を動いて行くのがありありと見えた。動いた痕には青い液で何やら不安なものを書き付けて……見る間に三行四行と走って行く。
Bは大きな頭を振って、歩いて見たが、もはやこの身体が自分のものでないように運ぶのが大儀であった。