Classici giapponesi con furigana
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おしえとたびするおとこ
押絵と旅する男
江戸川 乱歩
Leggi 押絵と旅する男 (おしえとたびするおとこ) di 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 17.416 caratteri · 35 schermate
左手の前方には、墨黒々と不細工な書院風の窓が描かれ、同じ色の文机が、その傍に角度を無視した描き方で、据えてあった。それらの背景は、あの絵馬札の絵の独特な画風に似ていたと云えば、一番よく分るであろうか。
その背景の中に、一尺位の丈の二人の人物が浮き出していた。浮き出していたと云うのは、その人物丈けが、押絵細工で出来ていたからである。黒天鵞絨の古風な洋服を着た白髪の老人が、窮屈そうに坐っていると、(不思議なことには、その容貌が、髪の色を除くと、額の持主の老人にそのままなばかりか、着ている洋服の仕立方までそっくりであった)緋鹿の子の振袖に、黒繻子の帯の映りのよい十七八の、水のたれる様な結綿の美少女が、何とも云えぬ嬌羞を含んで、その老人の洋服の膝にしなだれかかっている、謂わば芝居の濡れ場に類する画面であった。
洋服の老人と色娘の対照と、甚だ異様であったことは云うまでもないが、だが私が「奇妙」に感じたというのはそのことではない。
背景の粗雑に引かえて、押絵の細工の精巧なことは驚くばかりであった。顔の部分は、白絹は凹凸を作って、細い皺まで一つ一つ現わしてあったし、娘の髪は、本当の毛髪を一本一本植えつけて、人間の髪を結う様に結ってあり、老人の頭は、これも多分本物の白髪を、丹念に植えたものに相違なかった。