Classici giapponesi con furigana
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かざし
挿頭花
津村 信夫
Leggi 挿頭花 (かざし) di 津村 信夫 (つむらのぶお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 1613 caratteri · 4 schermate
すると、突然、萩盗人の少女は、私の方に向き直つた。折からの一際冴えた月の明りに、少女は一寸地蔵眉をよせると、萩の小枝を二本、頭の上に翳して、「萩の花はおきらひ?」と尋ねかけた。心持首をかしげてゐる。私の答へがないのを知ると、少女は手にしてゐた小枝を惜しげもなく捨てて、双の手を背後で組み合せるやうな姿態を作つた。と見るとまるで手品師のやうに、今度は片方の手に一輪の真紅な花を提げてゐた、「ダーリヤはおきらひ?」少女はその一輪をまた髪の上に翳して見せた。首を前よりも一層かたむけて。私はそのとき、知つてゐる、貴女は誰だか知つてゐる、さう云つて、危ぶなくその名を口にしようとした。すると、少女は、まるで現在からするりと脱け出るやうな素振りをした。その後は、私の夢のなかでも一片の雲の陰影が射したやうに、もうまるで憶えてゐなかつた。
私の夢は、もうそれとは何の脈絡もなく、他のものに移つてゐた。
私は、引手の金具に紫の総のついた、重さうな書院の襖をあけた。中は真暗であつた。私はその部屋を急いで横ぎると、又一枚、総のついた襖の金具をひいた。暗闇がやつぱり大きな口をあけてゐた。