Classici giapponesi con furigana
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りゃくだつせられたるおとこ
掠奪せられたる男
豊島 与志雄
Leggi 掠奪せられたる男 (りゃくだつせられたるおとこ) di 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.398 caratteri · 48 schermate
表戸のしめ切った町を、点々と電灯や瓦斯灯の浮んで見える中に電車のレールが青白く光っている町を、物影から迷い出て来る犬に交った帰り後れた一人々々の人影が見える町を、淋しい家並の上に月がぼんやり浮んでいる町を、取り留めもない考えを凉しい風に托しながら逍遙することは、山田にとっては云い難い楽しみであった。然しやがてその楽しみに秀子が加わるようになってからは、いつのまにか彼は従属の地位に置かれてしまった。
秀子は先に立って、例のぽくりをはいて、澄まし切って歩いた。彼女はただしなやかな線とふくよかな香りと滑かな肉体とのみであった。凡てに撓み凡てを拒まないうち開けた無心さであった。山田は少し後れがちに並んで歩き乍ら、時々彼女の方を顧みた。黒い房々とした髪の間から白い耳朶が覗いていた。小さな薄い耳朶であった。灯火に透したら一々血管がすいて見えそうな柔かい赤みを帯びた肉片であった。ぐるりと曲線の襞を描いて、その下に垂れている一片は、身体の運動につれてゆらゆらと揺めいているようであった。そのくせ指頭に挾んだら隠れる位の小さな薄さで、また水月のような柔かさを具えていた。