Classici giapponesi con furigana
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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
Leggi 支倉事件 (はせくらじけん) di 甲賀 三郎 (こうがさぶろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 204.697 caratteri · 406 schermate
私は小児を大切に育てます。又貞の後世も懇ろに弔ってやりますから、後の事は何も心配しないで下さい」
支倉は漸く顔を上げた。彼はハラ/\とはふり落ちる涙に、しとゞに両頬を濡らしながら、悔恨と慚愧と感謝との交錯した異様にひん曲った表情をして、激しく身体を慄わせて、悲痛な声を上げた。
「皆様に御迷惑をかけて相すみませぬ。別しても署長さんの御好意の程は生涯忘れません。申上げようもない大罪を犯しました。何とも申訳のない次第でございます」
一座はしんと静まり返った。
麗かな日は相変らず硝子窓に映じている。小鳥の囀る声はチヨ/\と長閑である。然し、この狭い一室に閉じ籠った人達は、恰で切離された別世界の人のように、時間を超越し、空間を超越し、醜い肉体を離れて、霊と霊とが結び合うのを、じっと経験していた。
支倉は暫く新たな涙に咽んでいたが、やがて思い直したように妻の方に向き直った。
「静子、許して呉れ。わしは云いようのない大悪人だったのだ。お前は嘸かしわしを恨んでいるだろう。わしのようなものを夫に持って後悔しているだろうね」
細々と絶えんとしては続く悲鳴に似たようなすゝり泣きが、一座の人達を限りない哀愁と異様な恐怖に陥れるように、いつまでも続いた。