Classici giapponesi con furigana
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せいだんじゅうにそう
政談十二社
泉 鏡花
Leggi 政談十二社 (せいだんじゅうにそう) di 泉 鏡花 (いずみきょうか) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 24.626 caratteri · 48 schermate
十八
「おお、あれは。」
「お米でございますよ、あれ、旦那様、お米さん、」と判事にいうやら、女を呼ぶやら。お幾は段を踏辷らすようにしてずるりと下りて店さきへ駆け出すと、欄干の下を駆け抜けて壁について今、婆さんの前へ衝と来たお米、素足のままで、細帯ばかり、空色の袷に襟のかかった寝衣の形で、寝床を脱出した窶れた姿、追かけられて逃げる風で、あわただしく越そうとする敷居に爪先を取られて、うつむけさまに倒れかかって、横に流れて蹌踉く処を、
「あッ、」といって、手を取った。婆さんは背を支えて、どッさり尻をついて膝を折りざまに、お米を内へ抱え込むと、ばったり諸共に畳の上。
この煽りに、婆さんが座右の火鉢の火の、先刻からじょうに成果てたのが、真白にぱっと散って、女の黒髪にも婆さんの袖にもちらちらと懸ったが、直ぐに色も分かず日は暮れたのである。
「お米さん、まあ、」と抱いたまま、はッはッいうと、絶ゆげな呼吸づかい、疲果てた身を悶えて、
「厭よう、つかまえられるよう。」
「誰に、誰につかまえられるんだよ。」
「厭ですよ、あれ、巡査さん。」
「何、巡査さんが、」と驚いたが、抱く手の濡れるほど哀れ冷汗びっしょりで、身を揉んで逃げようとするので、さては私だという見境ももうなくなったと、気がついて悲しくなった。