Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しゃこう

斜坑

夢野 久作

Leggi 斜坑 (しゃこう) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.977 caratteri · 39 schermate

Aozora Bunko

着ている印半纏の背印は平常の※サとは違っていたけれども、その半纏の腋の下の破れ目から見えた軍隊用の青い筋の這入った襯衣と、光るほど刈り込んだ五分刈頭の恰好が、源次のうしろ姿に間違いないのであった。しかもソンナ風に頭を抱えて小さくなった源次のうしろ姿を今一度、お作の白い顔と並べて思い出した福太郎は、怖ろしいというよりも寧ろ、何だか済まないような……源次に怨まれるのは当然のような気がして仕様がなくなった。源次の姿を吸い込んで行った斜坑の暗黒に向って、人知れずソッと頭を下げてみたいようなタヨリない気持にさえなったのであった。

しかし福太郎は間もなくそんな思出や、感傷的な気持の一切合財が、クラ暗の中で冴え返って行く自分の神経作用でしかないようにも思われて来たので、そんな馬鹿げた妄想の全部を打切るべく頭を強く左右に振った。するとその拍子に左手に提げている安全燈の光りがクルクルと廻転するに連れて、今度は眼の前の岩壁の凸凹が、どこやら痩せこけた源次の顔に似ているように思われて来た。しかも誰かに打ち殺された無念の形相か何ぞのように、ジッと眼を顰めていて、一文字に噛み締めている岩の唇の間から流れしたたる水滴が、血でも吐いているかのように陰惨な黒光りをしているのに気が付いた。