Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しゃよう

斜陽

太宰 治

Leggi 斜陽 (しゃよう) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.822 caratteri · 176 schermate

Aozora Bunko

お母さまは、私のからだを、しきりに心配して下さったが、私はかえって丈夫になり、いまではヨイトマケ商売にもひそかに自信を持っているし、また、畑仕事にも、べつに苦痛を感じない女になった。

戦争の事は、語るのも聞くのもいや、などと言いながら、つい自分の「貴重なる経験談」など語ってしまったが、しかし、私の戦争の追憶の中で、少しでも語りたいと思うのは、ざっとこれくらいの事で、あとはもう、いつかのあの詩のように、

昨年は、何も無かった。

一昨年は、何も無かった。

その前のとしも、何も無かった。

とでも言いたいくらいで、ただ、ばかばかしく、わが身に残っているものは、この地下足袋いっそく、というはかなさである。

地下足袋の事から、ついむだ話をはじめて脱線しちゃったけれど、私は、この、戦争の唯一の記念品とでもいうべき地下足袋をはいて、毎日のように畑に出て、胸の奥のひそかな不安や焦躁をまぎらしているのだけれども、お母さまは、この頃、目立って日に日にお弱りになっていらっしゃるように見える。

蛇の卵。

火事。

あの頃から、どうもお母さまは、めっきり御病人くさくおなりになった。