Classici giapponesi con furigana
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しゃよう
斜陽
Leggi 斜陽 (しゃよう) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.822 caratteri · 176 schermate
「飲ませてやって下さい」
お咲さんは、つばきを飲み込むようにしてうなずいて帰って行った。
私はお母さまのところに行って、
「お咲さんのところで、飲んでいるんですって」
と申し上げたら、お母さまは、少しお口を曲げてお笑いになって、
「そう。阿片のほうは、よしたのかしら。あなたは、ごはんをすませなさい。それから今夜は、三人でこの部屋におやすみ。直治のお蒲団を、まんなかにして」
私は泣きたいような気持になった。
夜ふけて、直治は、荒い足音をさせて帰って来た。私たちは、お座敷に三人、一つの蚊帳にはいって寝た。
「南方のお話を、お母さまに聞かせてあげたら?」
と私が寝ながら言うと、
「何も無い。何も無い。忘れてしまった。日本に着いて汽車に乗って、汽車の窓から、水田が、すばらしく綺麗に見えた。それだけだ。電気を消せよ。眠られやしねえ」
私は電燈を消した。夏の月光が洪水のように蚊帳の中に満ちあふれた。
あくる朝、直治は寝床に腹這いになって、煙草を吸いながら、遠く海のほうを眺めて、
「舌が痛いんですって?」
と、はじめてお母さまのお加減の悪いのに気がついたみたいなふうの口のきき方をした。