Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しゃよう

斜陽

太宰 治

Leggi 斜陽 (しゃよう) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 89.822 caratteri · 176 schermate

Aozora Bunko

それっきり、もう十日ちかくなるのだけれども、直治は、帰って来ないのだ。そうして、お母さまは、毎日マスクをなさって、直治を待っていらっしゃる。

「リバノールって、いい薬なのね。このマスクをかけていると、舌の痛みが消えてしまうのですよ」

と、笑いながらおっしゃったけれども、私には、お母さまが嘘をついていらっしゃるように思われてならないのだ。もう大丈夫、とおっしゃって、いまは起きていらっしゃるけれども、食慾はやっぱりあまり無い御様子だし、口数もめっきり少く、とても私は気がかりで、直治はまあ、東京で何をしているのだろう、あの小説家の上原さんなんかと一緒に東京中を遊びまわって、東京の狂気の渦に巻き込まれているのにちがいない、と思えば思うほど、苦しくつらくなり、お母さまに、だしぬけに薔薇の事など報告して、そうして、子供が無いからよ、なんて自分にも思いがけなかったへんな事を口走って、いよいよ、いけなくなるばかりで、

「あ」

と言って立ち上り、さて、どこへも行くところが無く、身一つをもてあまして、ふらふら階段をのぼって行って、二階の洋間にはいってみた。

ここは、こんど直治の部屋になる筈で、四、五日前に私が、お母さまと相談して、下の農家の中井さんにお手伝いをたのみ、直治の洋服箪笥や机や本箱、また、蔵書やノートブックなど一ぱい