Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 187.841 caratteri · 376 schermate
谷間をわたる鵯の声に、秋は日ましにふかくなる。城草の露もしとど冷たい或る朝だった。
「――殿ッ、一大事ですぞ」
いつにない藤掛三河守のあわただしい声がした。
子や妻の紙帳に近く、夜はやすんだが、長政は、具足も解いたことはない。
「三河。何事かッ」
すぐ寝所を出た彼の声も、あやしく息が弾んでいた。
朝討! そう直感したのである。だが、三河守の告げた異変は、もっと重大であった。
「二の曲輪――あの京極曲輪が、一夜のうちに、信長方の軍に占められておりまする」
「な、なに?」
莫迦な! ――と、いわぬばかりである。
「お疑いはまず措かれて、櫓の上より篤と、殿にも」
「そ、そんなはずは、ありえない」
望楼をのぞんで、彼は駈けのぼった。
真っ暗な階段で、いくたびか躓いたほどである。
櫓に立った。
京極曲輪とは、かなり距離があるが、ここに立てば、眼の下といってもいい。
見ると。彼方の城頭には翩々と、いく条かの旗幟が流れている。
その一旒でも、浅井家の臣、大野木土佐や三田村右衛門や浅井玄蕃のものではなかった。
しかも。
燦として、朝空に誇っている馬印の一つは、明らかに、敵方の将校、木下藤吉郎の陣地を証明しているものだった。