Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 197.228 caratteri · 394 schermate

Aozora Bunko

「――ああ」

と、向け場のない声を天にもらしたほどである。

後に、天下の統業をほぼ成し遂げて、安土に君臨する日となった時、信長もまた豪奢をやったが、英雄の心事をふかくさぐって観るに、誰か、ただ自分ひとりの栄華のためだけに――そんな小さい慾望だけのために――これほど大きな犠牲に恬然としていられようか。

物慾の飽満だけなら、すでに今の信長は、七ヵ国の領主として、十分に事足りていよう。名誉や空名を欲するなら、かれは京都へむかって或る運動もできる立場と位置にある。領界の不安を除くだけの意味なら、もっと保守的にも、もっと妥協的にも、他に方法はいくらもある。

かれが真に望んでいるものを実現するには、どうしても、犠牲の大はしのばねばならなかったのである。英雄の苦衷は実にここにある。では、彼の欲していたものは何かといえば、破壊でなく、建設にある。彼の理想している組織と文化を築くことにあった。

信長と会ったこともなく、信長の生活も為人も知らないくせに、近頃よく信長のうわさを交わす堂上の公卿たちのうちには、

「信長。あれはやはり田舎者じゃ。料理の味も知らぬ」

とか、

「壊し大工も同じことで、壊すことには、驀しぐらじゃが、建てることはようせぬ男よ」