Classici giapponesi con furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Leggi 新書太閤記 (しんしょたいこうき) di 吉川 英治 (よしかわえいじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 187.757 caratteri · 375 schermate
一城の大台所である。たくさんな庖丁人や下婢小者もいる。台所奉行さえいる。けれど、煮炊きはできない、香の物の刻み方は知らないというような奥方ではなかった。
きのうも今日も、負傷した将士へは、自身、その手当を見、食事の世話も、これへ来て、手ずから調理していたほどな夫人である。事なき日でも、良人の好みのために、調味や庖丁に親しむことは決して珍しいことではない。
貧しい日こそ人をつくる。殊に女の教養は、貧苦窮乏の冬日をこえて来た風雪の薫香でなければ、まことに根のない剪り花のそれにひとしい。
秀吉は、この夫人がむかしに変らず、襷がけで立ち働く姿を、何か清々した心地で見とれていた。
いまでこそ、この家も、能登七尾に一城、この府中に一城、父子両方で二十二万石の雄藩をなしているが、清洲時代の貧乏は、隣の藤吉郎の家にも負けないくるしさで、米の一升借りはおろか、塩の一握りや、一夕の燈し油さえ、あったりなかったりで、
(おや、今夜は明りがついておるぞ)
と、隣家の富有な日が、すぐそれでも分るくらいな時もあった家である。
――が、その頃の苦節が、何と今日のこの奥方姿にあやうげのない香気となって生かされて来たことか。