Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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しんじゅのことば

新樹の言葉

太宰 治

Leggi 新樹の言葉 (しんじゅのことば) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 29.156 caratteri · 59 schermate

Aozora Bunko

……

私は、障子を少しあけて、小路を見おろす。はじめ、白梅かと思った。ちがった。その弟の白いレンコオトだった。

季節はずれのそのレンコオトを着て、弟は寒そうに、工場の塀にひたと脊中をくっつけて立っていて、その塀の上の、工場の窓から、ひとりの女工さんが、上半身乗り出し、酔った弟を、見つめている。

月が出ていたけれど、その弟の顔も、女工さんの顔も、はっきりとは見えなかった。姉の顔は、まるく、ほの白く、笑っているようである。弟の顔は、黒く、まだ幼い感じであった。I can speak というその酔漢の英語が、くるしいくらい私を撃った。はじめに言葉ありき。よろずのもの、これに拠りて成る。ふっと私は、忘れた歌を思い出したような気がした。たあいない風景ではあったが、けれども、私には忘れがたい。

あの夜の女工さんは、あのいい声のひとであるか、どうかは、それは、知らない。ちがうだろうね。

(「若草」昭和十四年二月号)