Classici giapponesi con furigana
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しんじゅのことば
新樹の言葉
Leggi 新樹の言葉 (しんじゅのことば) di Dazai Osamu (太宰 治) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 29.156 caratteri · 59 schermate
子供心ながらも、ずたずた断腸の思いであったのである。あのとき、つるの言葉のままに起きてやったら、どんなことがあったか、それを思うと、いまでも私は、悲しく、くやしい。つるは、遠い、他国に嫁いだ。そのことは、ずっと、あとで聞いた。
私が小学校二、三年のころ、お盆のときに、つるが、私の家へ、いちど来た。すっかり他人になっていた。色の白い、小さい男の子を連れて来ていた。台所の炉傍に、その男の子とふたり並んで坐って、お客さんのように澄ましていた。私にむかっても、うやうやしくお辞儀をして、実によそよそしかった。祖母が自慢げに、私の学校の成績を、つるに教えて、私は、思わずにやにやしたら、つるは、私に正面むいて、
「田舎では一番でも、よそには、もっとできる子がたくさんいます。」と教えた。
私は、はっとなった。
それきり、つるを見ない。年月を経るにしたがい、つるに就いての記憶も薄れて、私が高等学校にはいったとし、夏休みに帰郷して、つるが死んだことを家のひとたちから聞かされたけれど、別段、泣きもしなかった。つるの亭主は、甲州の甲斐絹問屋の番頭で、いちど妻に死なれ、子供もなかったし、そのまま、かなりのとしまで独身でいて、年に一度ずつ、私のふるさとのほうへ商用で出張して来て、そのうちに、世話する人があって、つるを娶った。