Classici giapponesi con furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Leggi 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) di 林 芙美子 (はやしふみこ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 247.330 caratteri · 497 schermate
紺縮みの着物に、手拭のように細いくたびれた帯をくるくる巻いて、かんしょうに爪をよく噛んでいた。
「ああとてもひでえ目にあったぜ。」
目玉のグリグリした小さい方が、ひとわたり周囲をみまわして大きい方につぶやくと、汽車は逆もどりしながら、横川の駅に近くなった。この芸人達は、寄席芸人の一行らしいのだ。向うの男と女は、時々思い出したようにボソボソ話しあっていた。「アレ! 何だね、俺ァ気味が悪いでッ。」突然トンキョウな声がおこると、田舎者らしい子供連れのお上さんが、網棚の上を見上げた。お上さんの目を追うと、芸人達の持ちものである網棚のバスケットから、黒ずんだ赤い血のようなものがボトボトしたたりこぼれていた。
「血じゃねえかね!」
「旅のお方! お前さんのバスケットじゃねえかね。」
背中あわせの、芸人の男女に、田舎女の亭主らしいのが、大きい声で呶鳴ると、ボンヤリと当もなく窓を見ていた男と女は、あたふたと、恐れ入りながら、バスケットを降ろして蓋をあけている。――ここにもこれだけの生活がある。私は頬の上に何か血の気の去るのを感じる思いだった。そのバスケットの中には、ふちのかけた茶碗や、朱のはげた鏡や、白粉や櫛や、ソースびんが雑然と入れてあった。