Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

Leggi 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) di 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 138.172 caratteri · 277 schermate

Aozora Bunko

小閑を得て訪ずれると、二階へともなって、箏を沢山たてた、小間の机の前でこういった。

「此処へ、上って、作曲するだけが楽しみであり、生きている気がする。」

彼女の研究は、古楽に、洋楽に、学問の方もますます深まっているようだった。何か素晴しい作を与えて、彼女の沈みきった心の灯を掻きたてなければならない――

私がそう思った眼を見て、彼女は嬉しそうに、青い絃を張った箏をとりだした。

「これが、いつぞやお話した金井能登守の作の箏。」

震災に、頭だけ、うっすら火をかぶったのを、名作と知らぬ持主が、売に出したものであろう、手に入れてよく調べると、胴の真ん中に銘があったのだ。

「能登守の作は、二面しか残っていないという記録があるから、そのうちのこれは一面です。好いあんばいに、天人の彫りは無事で、焦げた箇所は波形だけですが、その波形は彫でなくって、みんな、薄い板が組み合せてあるのです。」

その手のこんだ細工の波がたは、箏の縁を、すっかりとりかこんでいるのだった。彼女はこの箏に「青海波」の名を与え、青い絃を懸けた。

「この箏で、五十年の祝いには弾こうと思う。鼓村さん(那智俊宣)が、放送したのもこれ、赤坂三会堂で演奏会を催して、この箏について説明をして、巻物にして書いておくるといっていたが、そのままになってしまって――」