Classici giapponesi con furigana
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いちかわくめはち
新編 近代美人伝 (下)
長谷川 時雨
Leggi 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) di 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 138.172 caratteri · 277 schermate
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大阪郊外池田山の麓に家居した彼女は、汽車に乗っただけで、郊外から郊外へ移って来たほど気が軽かった。
青菜に靄のかかる宵は、青葉の匂いのはげしいころだった。おなじような郊外の住家というが、二階から六甲山も眺められる池田での生活には、彼女はガラリと様子が一変してしまった。主人が、今朝のお出かけには御機嫌がよかったのに、お帰りになってから悪い、私がお出むかえしなかったからだろうか、なんぞというようになった。だが、それは表面だけで、四十四年五月十一日の日記には、
――私は結婚生活に経験がない。始めて男性に心身を許してしまった今日、私の結婚生活に対する幻影は早くもさめてしまった。古人が結婚は恋愛の墓だといっている。私は、恋人の努力によって、内外一致した恋愛生活が、真の結婚生活だと信じていた。結婚を葬るのは、当事者の努力が足りないためだと思っていた。しかし、これは私一人のイリュージョンかもしれない――
と、何処やらに絶望を噛みながら、それでも、純一に夫を愛そうと、恋の自伝を書くために、行李の底へ押込めておいた、五年間もつづけたという霊の恋の、形見の書簡を、陶器の火鉢をひっぱり出して燃してしまった。