Classici giapponesi con furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Leggi 旅愁 (りょしゅう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 576.941 caratteri · 1138 schermate
」
こういう東野に久慈は、
「それや、そうだ。仕事をする方がどんなに楽か知れないや。」と賛成した。
森の直立した樹間から早くも湖面の一端が桃色に光った生物のように見えて来た。
自動車を捨てた一同は湖の方へ歩くと、一見榧の樹かと見まがう松の間を通り、ボートに乗った。久慈と矢代はオールを持って東野が艫に坐り、千鶴子とアンリエットを中に挟んでボートは岸を放れた。湖面は人の顔もよく見えなかった。水藻の匂いが久しく忘れていた日本の匂いとなって矢代の鼻に流れて来た。なまめかしい紅色の西瓜のようなまん丸い提灯を艫につけたボートが、物も云わず幾つも舟端を辷っていった。
「ブロウニュの森の中でボートを漕いだら、もう日本へ帰ってもいいって誰か云ってたが、これなら矢代君も満足だろう。」と久慈は云った。
「まア、いいよ、ここならね。」
矢代はこれで印度洋とアラビアとを廻って来て今パリでボートを漕いでいるのだと思うと、手にかかる一滴の水も、はるかに遠い故郷を眺める感傷となり窓の開いた思いだった。
「何ぜ黙っているのかね。これが青春じゃないか。」
と久慈は云ってぐんぐん一人オールに力を入れた。