Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Leggi 旅愁 (りょしゅう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 576.941 caratteri · 1138 schermate

Aozora Bunko

矢代は真紀子の助太刀に出て来てくれたその気持ちが有り難く、笑いながらもこの調子だと自分も本物のアルマンに今になるのではないかと思って脊を延ばした。

「どうも僕にはあんな歌劇は苦手だな、この方がいいや。」

「でも、いいわ。久慈さんもいらっしゃれば良かったのに、どうしてるんでしょうね。」

ふとそういう憂いげな真紀子に矢代は頷きながら、それではやはり真紀子も舞台を見つつ、久慈を想い泛べていたマルグリットの一人だったのかもしれぬと気が附いて云った。

「今度は久慈とまた来ましょう。久慈はハイカラだからこういうのは好きだ。何をしてるのかなア。」

汗がひいたためか柱廊の大理石の冷たさがひやりと両脇から流れて来た。遊歩廊から下のホールへかけてだんだん集って来たタキシイドやソアレの組が、傘灯の下で囁きかわしながらゆるく旋回をつづけていた。燦爛たるその景観を見ているうちに、泡立つような白い扇のゆらめきや耳飾が、突然一撃して去った東野の今日の言葉を矢代に思い出させた。

「君は過去を見すぎるぞ。」

しかし、矢代は露台の真紅の絨毯の上に突き立ったままその東野にひとり抗弁している自分を感じた。