Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Leggi 旅愁 (りょしゅう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 576.941 caratteri · 1138 schermate

Aozora Bunko

外国の婦人ならともかくも、千鶴子を信じ切ってしまったのを、今さら何んの形をつけようというのか、矢代が久慈をうるさく思うのは、大切なこちらの心の暖め方を一挙に突き崩そうとする無理をそこに感じたからだった。

「君のいうように、どこの国でも通用するのは、それや論理かもしれないが、論理以外に人間を信用するという心の方が、もっと通用するよ。その方が大切だ。」

とこう矢代は久慈に定めつけてみたいのである。しかし、こんなことも今は無用の返答だと思い止まった。そして、

「君はいつごろ日本へ帰るのだ。」と彼は訊ねた。

「さア、そ奴はまだ考えていないね。しかし、まア、僕ぐらいはここで沈没してみるのも、良かろうと思っているんだ。」

久慈は切り裂いた鮭の中から小骨を抜きとりながら、

「これ日本のかもしれないぜ。今日のは馬鹿に美味いや。千鶴子さん、鮭をフランスへ入れるのに手伝ったって云ってたが、こ奴かな。」

と云って矢代を見て笑った。そう云えば、このあたり一帯のカフェーにあるコーヒー茶碗や食器などは、皆どこのも日本製ばかりだと聞いたことも矢代は思い出され、よくもあの地球の端からここまで満ちて来たものだと、街の拡がりを今さらのように眺めてみるのだった。