Classici giapponesi con furigana
ja-reading.com
Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.
りょしゅう
旅愁
横光 利一
Leggi 旅愁 (りょしゅう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 576.941 caratteri · 1138 schermate
寝床の中へ這入ってから、彼は間もなく自分の誕生日の来ることに気がついた。そして、去年のそのころは航海の途中で、船室の鉢の桃の芽が加わる南国の暑さに、いたずらに伸び繁っていった無聊さを思い出した。ピナン、コロンボ、アデンと進むその船の中では、千鶴子と久慈がいつも手を取り合わんばかりにして、甲板の影から影を愉しげに廻っていたものだったが、過ぎ去った日の悩ましさも消したくなって、矢代は、蒲団の中で寝返りうった。枕から耳が上ったふとその拍子に、幽かに何か呻き声に似たもの音が聞えて来た。それは父の寝室かららしく、暫く途絶えてはまたつづいたかと思うと、その後はしんと沈み、動悸だけ騒がしく響いてもう彼は眠れなかった。母は父の鼾声の高くなったこのごろ、眼が覚め易く別室で眠る習慣だったから、母にはまだ父の呻きも聞えていないかもしれないと思い、彼は起きて父の部屋の外の電気を点け、襖を細目に開けてみた。呻きらしいものもそのときはもう聞えなかったが、嗅ぎ覚えのない悪臭が部屋に籠っていたので、なお少し襖を開けて光りを中に入れてみた。すると、蒲団から乗り出た父の白髪が、あたりいちめんに流れている茶褐色の液体の中に俯向いたままじっとしていた。