Classici giapponesi con furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Leggi 旅愁 (りょしゅう) di 横光 利一 (よこみつりいち) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 576.941 caratteri · 1138 schermate
「ここはなかなか眺めは良いね。」
「良いだろう。だから僕は早く来たんだよ。船の着くのは二時だとさ。あの船がそうなんだが、伝染病が出たとかで、昨夜からあそこに碇泊したきりだ。」
塩野の指差す沖を見ると、鉄壁のように並んだ幾つもの船舶の上から、一段高く白い頭を浮き上げた巨船が見えた。起重機や鉄板の間を幾百の鴎がしなやかに飛び流れていた。空が晴れているので波も蒼みを加え、照り返しの明るさに微笑が自然に泛んで来た。食堂は海中に突出した位置のため、船の食堂に出た航海の日の思い出を湧き立たせ、暫くの間も矢代は、もう忘れていた風景を限りなく思い出すのだった。
「ここなら二三時間待つのは愉しみだね。いろいろ君も、思い出すことがあるだろう。」
「もうたまらないんだよ。さきから。」
画家の佐佐も無言だった。つづく波の拡がる末の方から、肌を洗うように襲って来る哀愁に矢代も暫く黙っていた。
「何んだろうね、この妙な寂しさみたいなものは。」
見れば見るほど増して来る小舟の数を見詰めながら、矢代は云った。身動きして笑った佐佐の鋭い横顔に日が射し、鴎の描く白い速度に随って彼も視線を移していくばかりだった。