Classici giapponesi con furigana
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うえの
日和下駄 一名 東京散策記
永井 荷風
Leggi 日和下駄 一名 東京散策記 (うえの) di 永井 荷風 (ながいかふう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.955 caratteri · 70 schermate
然し此等の断定の当っていなかった事は、やがて僕等一同が銀座のカッフェーには全く出入しないようになってから、或日突然お民が僕の家へ上り込んで、金銭を強請した時の、其態度と申条とによって証明せられることになった。お民の態度は法律の心得がなくては出来ないと思われるほど抜目がなく、又其の言うところは全然共産党党員の口吻に類するものがあった。
書肆博文館が僕に対して版権侵害の賠償を要求して来た其翌日である。正午すこし前、お民は髪を耳かくしとやらに結い、あらい石だたみのような飛白お召の単衣も殊更袖の長いのに、宛然田舎源氏の殿様の着ているようなボカシの裾模様のある藤紫の夏羽織を重ね、ダリヤの花の満開とも言いたげな流行の日傘をさして、山の手の静な屋敷町に在る僕の家の門前に現れたのであった。芸者とも女優ともつかぬ此のけばけばしい風俗で良家を訪問することは其家に対しては不穏な言語や兇器よりも、遥に痛烈な脅嚇である。むかしの無頼漢が町家の店先に尻をまくって刺青を見せるのと同しである。僕はお民が何のために突然僕の家へ来たのかを問うより先に、松屋呉服店あたりで販売するとか聞いているシャルムーズの羽織一枚で殆前後を忘れるまでに狼狽した。