Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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うつりが

日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江

近松 秋江

Leggi 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江 (うつりが) di 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.306 caratteri · 300 schermate

Aozora Bunko

真似をして黙っていてやろう、と思っていると、十時も過ぎて、やがて十一時ちかくになって、遠くの廊下に静かな足音がして、今度は、どうやら女中ばかりの歩くのとは違うと思っていると、襖の外で何かいう気配がして、女中が外から膝をついて襖をそうっと開けると、そこに彼女のすらりとした姿が立っていた。そして、さっきとちがい頭髪の容もととのえ薄く化粧をしているのでずっと引き立って見えた。こうしてみると、たしかに佳い女である。この女に自分が全力を挙げて惚れているのは無理はない。こんな女を自分の物にする悦びは一国を所有するよりもっと強烈なる本能的の悦びである。

女は悠揚とした態度で入ってきながら、

「えらい遅なりました」と、一と口言ったきり、すこしもつべこべしたことはいわない。夕飯は済んだのかと訊くと、食べて来たから、何も欲しくないという。翌日は一日、寒さを恐れて外にも出ずにそこで遊んでいたが、彼女は机に凭れて、遠くの叔母にやるのだといってしきりに巻紙に筆を走らせていた。桜の花びらを、あるかなきかに、ところどころに織り出した黒縮緬の羽織に、地味な藍色がかった薄いだんだら格子のお召の着物をきて、ところどころ紅味の入った羽二重しぼりの襦袢の袖口の絡まる白い繊細い腕を差し伸べて左の手に巻紙を持ち、右の手に筆を持っているのが、賤しい稼業