Classici giapponesi con furigana
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うつりが
日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江
近松 秋江
Leggi 日本の文学 8 田山花袋 岩野泡鳴 近松秋江 (うつりが) di 近松 秋江 (ちかまつしゅうこう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 152.306 caratteri · 300 schermate
どうすることも出来ない私はちょうど猿が樹から落ちたような心持になった。向うで幾らかその気があるなら、何とか合図くらいのことはしてくれそうなものであるのに、少しもそんな様子のなかったのは、すっかり心が離れてしまっているからである。そう思うともう心に勢いが脱けて、その上つづけて寒い闇の中に佇んでいる力がなくなり、落胆と悲憤とに呼吸も絶え絶えになりそうな胸をそっと掻き抱きながら空しく引き返して戻ってくるのであった。
それ以来硝子戸を固く釘付けにでもしたと思われて、夜の闇にまぎれて幾ら押してみても引いてみても開かなくなってしまった。相変らず出かけていって窓の下に佇んで家の中の物音に身体中の神経を集めて耳を澄ましても母子の者の話す声さえせぬ。何とか家の中を窺いて見る方法はないかと思って、硝子戸を仰いで見ると、下の方は磨き硝子になっているが上の方は普通の硝子になっているので、路次の中に闇にまぎれて、人の通るのを恐る恐るそこらに足を踏み掛けてそっと※(「木+靈」、第3水準1-86-29)子格子に取りついて身を伸び上って内を窺くと、表の四畳半と中の茶の間と両用の小さい電燈を茶の間の方に引っ張っていって、その下の長火鉢によりかかりながら彼女が独りきりでいつかの絽刺しをしているのが見える。